Q&A
自己破産をすると、車はどうなりますか?
1 自己破産と車
自己破産手続きにおける権利、財産の流れを大まかに説明すると、①破産者の手持ちの財産を現金化し、②その財産の範囲で債権者へ法律のルールに従って平等に分配し、③残った債務の支払義務が免除される、ということになります。
そのため、基本的には手持ちの財産は現金化される、ということになります。もっとも、すべての財産が現金化され、分配されることにはなっていません。
これは、自己破産手続きが、破産者の生活再建も目的としている(破産法1条)ことによるものです。
では、自己破産しようとしている人が持っている車は手元に残すことができるでしょうか。以下、この問題について解説します。
2 価値の高い車の場合
上記のとおり、一定の範囲の財産については手元に残せる場合がありますが、その基本的な目安となるのは、総額99万円以下の財産となっています。
例えば、総債務額が300万円の方が自己破産をしようと考えており、他方、300万円の価値がある高級外車持っていたとします。
この場合、この方は車を売れば債務をすべて完済できるわけですが、自己破産をして300万円の債務については支払をせず、他方手元には300万円の価値の車が残る、というのは明らかに不公平といえます。
したがって、車だけで99万円を超える価値がある場合については、通常手元に残すことはできないと考えられます。
3 価値の低い車を複数台持っている場合
では、例えば10年以上乗っている車で、ほとんど市場価値が見込めない車を2台、3台持っており、預貯金等と合わせても99万円を超えない場合には、いずれも手元に残すことができるでしょうか。
いくつかの観点から残せるかどうかが判断されますが、1つは20万円を超えるかどうかの基準があります。
20万円以下の財産については、破産手続きにおいて処分不要としている裁判所があります。
横浜地裁においても、現金は33万円、他の資産については20万円以下の場合には「同時廃止」で手続きを進めることが可能とされており、この基準以下の場合、処分不要となる可能性があります。その結果、ほとんど市場価値の低い車が複数台あったとしても、20万円以下であれば手元に残せる可能性があります。
また、他の財産と合わせて99万円以下に収まる場合には、「自由財産拡張」を経て、手元に残せる可能性が残っています。
もっとも、裁判所の判断により、複数の車両を保持する必要性がない、という理由ですべての車両の維持ができない可能性は残ります。
4 車のローンが残っており、かつ所有権留保がついている場合
所有権留保というのは、ローンの返済が終わるまで車両の所有権を残しておき、完済後に所有権を移転することにする、という担保権の一種です。
車検証の所有者欄をご確認いただければ通常は確認することできます。
過去には争いにもなっていましたが、最高裁判決などを踏まえ、近時では基本的に所有権留保がされている場合、車は引き上げられることになるといえますので、通常手元に残すことはできません。
何とか車を残そうと、弁護士に依頼する際に車のローンを支払っていること等を秘匿するようなことがあると、準備中に契約を解除されることになったり、免責決定が認められなくなったりする等のリスクがありますので、十分ご注意ください。
同時廃止事件となるか管財事件となるかはどのように決まるのですか? 自己破産のデメリットはどのようなものですか?